実践しています。

up and ups just fine

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奥多摩にて、印象的な一枚。

一年の終わりのテキストをどうやって締めようか、この1ヶ月のあいだ走りながら何度回想しただろうか。個人的なランニングのログを綴るのもいいけれど、それだけには留めておけない事が世界中で目まぐるしくあった事実。反面、地域・社会あるいは世界がうごめく中で自分と結びつかない手応えのなさがあったことも事実。至るところで「分断」の可視化は起こったものの、実感まで落ちきらなかったというのが正直なところ。ちょうど今日、福岡市の高島市長がFacebook投稿で「差別や偏見」について触れていた。確かに、この言葉の方がリアリティがあるかもしれない。或いは、分断された対岸は自分の視界からは見えないところに離れてしまったのかもしれない。或いは、自分自身がフィルターバブルに覆われているのかもしれない。もちろん、見る努力はしている。何らかのかたちでコミットしたいと思っている。特に、ドメスティックな問題。子どもたちの未来に関わる問題には意識的に関わらなきゃいけないと痛感した一年だった。そんなことを考えながら、日々淡々と走った12月。

 

正直、走っているあいだは凪だった。この表現がある種、分断を表す言い回しかもしれない。それでも自分は凪だった。怪我はなく、予定が狂うこともなく、概ね順調にトレーニングが積めた。もともとレースに出るつもりはなかった2020年。そもそも何年も前に、当たり前にレースに出る習慣はなくなった。そういう意味では変わらない日常だったかもしれない。

変わったことと言えば走ることの意味。トレイルを走り始めた初期は、人との繋がりが一番だった。その中で自分の証明が重要だったかもしれない。幸運にも、すくいあげられ、仲間にめぐまれ、浮かぶことができた気がする。セッションを通して貴重な経験が多くできた。そこで満足してしまった感も強い。走り始めた頃の衝動は萎んで、そこそこ楽しければいいような時期もあった。でも自意識だけは肥えていくから困った。ライフステージが変化して、このままフェードアウトしていく気配もあった。それはいかん、踏みとどまりなさい、という義務感はさらにあった。

一念発起して再び走り始めたのが2019年。身体は重かった。継続して走る自信はなかった。奮い立たせるように、いろんな薪を焚べて日々走った。朝からTHA BLUE HERBをたくさん聴いた。また戻りたいという想いは強かった。自分の記憶を更新したいという想いも強かった。何より、信越五岳で稲葉さんと一緒に走りたかった。段々と練習の回数は増えた。距離も伸びた。早起きができるようになった。トレーニングメソッドがはまってタイムも伸びた。走ることそのものがようやく楽しいと感じることができたのが2019年。結果、記録も良かったし、記憶も更新できた。

 

2020年、いや2019年9月から。次の目標はUTMF2021の表彰台を目指すこととした。さらに記憶を更新したかったし、トップ選手の身体感覚に近づきたいと思った。そのための練習を継続するには”表彰台”は日々奮い立たせるために大きなモチベーションとなった。練習を継続するために、感染対策はマストだった。職場までの移動を通勤ランに切り替えるいい口実になった。1年を超えるスパンでのトレーニング、2019年とは違った方法ながら薪を焚べ続けることで走りきることができた。

でも実は、モチベーション維持の方法は変化しつつある。最近は焚きつけることなく、トレーニングが継続できている。だんだんと、”表彰台”という意識も薄らいできた。まったく諦めた末の境地ではないし、意識はしているけど目的化していない末の感覚というところだ。人がいての順位だし、上手くいって結果がでればハッピーエンド。だからと行って”表彰台”に登れなかったことが失敗とも言い切れないはず。それよりも、日々やるべきことをやったか、自信をもってスタートラインに立てるかが最も重要。レースがはじまればほとんどが自分のペース、そして最適な判断を続けるのみ。最近ではそう思っている。

つまりこれが凪の感覚。段々と周囲が消えてくる。自分しかいなくなる。身体だけが動いていて、脈は一定のテンポを刻む。その瞬間が気持ちいいし、その瞬間の連続がすべてに感じる。スタートの合図が鳴って走り始め、気づいたらゴールをしている、そんなレース展開を理想にしている。そこに自分の美意識が宿っているように最近思う。

そんな心境にたどり着きたい、2020年の年の瀬にランニング観の変化が浮かび上がってくる。そういう意味で、世の中が刻々と変化していても、走っている瞬間は凪だった。

2021年の今頃、どんな心境で年の瀬を迎えるのか、どこに流れ着くのか、今から楽しみにしている。