実践しています。

up and ups just fine

UTMB for the planet

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Drymax時代のJim Walmsleyスタイル

 

UTMBが企画するヴァーチャルレースUTMB for the planetに出場しました。

ヴァーチャルとは言え、自分がUTMBにでるとは想像すらしていなかったので、これを機に初UTMBそしてヴァーチャルレースデヴューしました。

概要は我らがdogsorcaravanの記事に任せるとして、いくつかあるカテゴリの中で僕はUTMB170に出場。2020.07,20〜08.30の期間中にリアルレースと同じく累計距離170km、累積獲得標高10,000mD+を達成すれば完走となる。かつ、山に行けない人への考慮もあり、標高を稼げない場合は平地の走行距離を累積標高に換算するシステムがあり、オープンなイベントとしての配慮を感じる。

 

dogsorcaravan.com

 

IRUNFARが4月に開催したヴァーチャルレースOperation Inspiration以来、アメリカを中心にいくつかヴァーチャルレースが現在まで続いている。止まってしまったトレイルレースやコミュニティへのチャリティ要素が強いこと、ヴァーチャル企画自体に興味があったので早くエントリーをしたいと思いつつ、走った距離が換算されてそれで終わりだと参加する意義として消化不良な予感がしていたので、思い入れのある団体が企画しないか待ちわびていたところUTMBが開催してくれたので、ついにエントリーが叶った。

実際、参加したことのない大会なので、アクティビティ中に時計の距離表示を見ながら本場の景色を想像することはできない。ただ、手がかりになるのはUTMB2019で小原さんが23時間で8位入賞したことだ。はたして、自分はアクティビティを分割したとして同じレースプロファイルを同じタイムで走ることができるのか?距離170km・累積10,000mに対してどこまで立ち向かえるか興味があった。

UTMB for the planetのレギュレーションはアクティビティ中の合計タイムではなく、アクティビティを開始した日から終了した日までとされている。つまり、1回で170kmを走りきったほうがタイムはいいし、分割するなら2日続ける方が合計時間は短くなり、リーダーボードの上位にランキングされる仕組みだ。

この制約が働いているので、自分もレースさながらの緊張感で、自分の限界に挑戦することにした。レース同様に一人で走る。ただし安全第一なので夜間は走らない。そうなると週末をつかって2日続けてチャレンジするのが一番痺れるはず。距離85kmで累積獲得標高5,000mD+のコースを都内で設定すると、これがシンプルかつタフ。

 

www.strava.com

 

高尾駅シャモニー(かつクールマイユール)に見立ててスタート・ゴールとして、南高尾から大垂水峠を越えて陣馬山まで主線を走る。陣馬山からは醍醐丸を境界線にハセツネコースに合流して三頭山まで登り続ける。このコースを単純に往復するとちょうど85kmで5,000mD+となるわけだ!三頭山まではひたすら登り基調で40km進むことになる。おまけに初日が終わって一晩寝たら、始発でまた高尾に行って同じコースを往復するという、想像しても感覚的に理解できない難易度だ。初日を無難にクリアしてしっかり寝れば行ける気がするけど、2ヶ月近くトレイルに行っていない身体が登り続きのコースに耐えられるのかは走ってみないとわからない。初日が13時間、二日目は15〜17時間で合計30時間以内を想定タイムと置いてみた。高尾-陣馬が約20km、陣馬-三頭山が約20km。高尾山域は知ったルートでエスケープが多いからいいとして、陣馬を越えると途中水場がない。都民の森に降りない限り、陣馬-三頭山の往復40kmはエイドなしで自走することになるから、水切れだけは防がなきゃいけないのが心配だ。

 

 

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8/8と9の週末を使って決行。スタメンのザックArctery'xのNorvan7に、付属のハイドレーションを初めて搭載して、補給食もしっかり持って出発した。

早朝ながら大垂水峠を越えるまでは蒸し暑く、思ったように身体が動かない。翌日の体力も考慮して、走ったり歩いたりを繰り返して陣馬で補給して出発する頃には3:30経過していた。和田峠の関所に似た雰囲気は独特で、越えたとたんに違う山域に入ったことを実感していつも緊張感が増す。ハセツネコースは相変わらず苦手で、鬱蒼とした空気と急坂が続いて全然進まない。熊倉山の山頂で少し休んで、気分転換に100miles100timesの最新エピソードをスピーカーで流したらようやくテンポが良くなってきた。相変わらず10〜14min/kmのスローテンポでストック使いながら、止まらずに進み続けた。

ストックの利点は圧倒的に登りがラクになること。反面、使い慣れてないこともあってフラットと下りは普段ほどのスピードがでない。UTMBのような大きな登りと下りが続くコースならメリットは大きいだろうけど、走れるコースのUTMF(使用禁止です)には一長一短かもしれない。今回、数年ぶりに使ったハイドレーション。セルフサポートで水場が限られる場合はたくさん持ち運ぶために有用だが、とにかく肩への負担がすごい。背中に2L水があるだけでぜんぜん違う。終始、肩への圧迫感と、フロントとの比重のアンバランスが気になった。こりぁ、レースで使うことはないな。

 

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25mile地点 : 40kmで累積3,300mD+

 

結局、40km地点の三頭山に着くまでに9時間がかかった。このペースで戻るとどこかで完全に日が暮れて、ナイトトレイルになってしまう。下り基調とは言え思うように身体が動かず、空の色の変化と共に時間が過ぎていくことを感じる。まずはライトを使う前に浅間峠を越えること。そこまで行けば最低限の選択肢が生まれる。浅間を越えたら次は和田峠までたどり着くこと。生藤山のあたりで完全に日が落ちてしまいライトを灯す。ここからは敗戦ムードで和田峠にたどり着くことだけを考える。なんとか関所を越えて高尾山域に戻ってきた瞬間、大袈裟だが生きて帰ってこれた安心感は相当なものだった。それくらい、特に夕暮れ時のハセツネ山域と場所を問わず夜の単独行が僕は苦手だ。

和田峠についた時点であたりは真っ暗の午後7時。知ったルートとはいえこれ以上進む気にはなれなかった。僕のUTMB for the planetは60km地点で関門アウト。陣馬高原下のリタイアバスに収容されてあえなくスタート地点の高尾駅シャモニー)に戻った。

 

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Colombiaロゴのマーキング発見!つまりUTMB!!?

 

これはずっと書きたいテーマで、最近は虜になっている。バーチャルレースへの参加もそのひとつ。僕たちトレイルランナーは他のどのスポーツにも増して、プリミティブに身体を駆動している。かつ、都市ではなく自然と一体になることで、このアクティビティの持つ楽しみを味わっている。言わば、フィジカルであり、ネイチャーである。

同時に、トレーニングから日々の体調管理はデジタルデヴァイスを通じて集積していく。SNSを通じたアクティビティやモチベーションの共有は、個別の身体・個別の運動でありながらネットワーク化されたコミュニティに行き渡る。言わばデジタルであり、ヴァーチャルな世界にいる。

一見交わらないような、両極端な事象が、僕たちはにとっては違和感なく、自然に交差している。リアルな世界で制約が続く現在、僕たちはヴァーチャルの世界でどんな振る舞いをできるのか。例えば、リアルな大会で得られる興奮や緊張感を再現するためのヴァーチャルレースではなく、ヴァーチャルでこそ生まれる新しい遊びを僕たちは構築できるのか。たったひとり自然のなかでフィジカルを駆動して、何をデジタルワールドに転換できるのか想像している時間は格別だった。

本題のチャレンジは失敗してしまったが、僕のフィジカルデジタルツイン探求はこれからもつづく。