実践しています。

up and ups just fine

歩くべきか、走るべきか。斜度への検証。

トレイルランニングレースが面白いところ。それは特に距離が伸びるほど、また累積標高が増すほど、不確定要素が増すことだと思う。距離が伸びれば行動時間も必然的に長くなり、天候やコンディションの変数が増す。累積標高が増えれば登り・下りのテクニックや、出力の加減が人によって変わってくる。

つまり前者は「経験値」が重要で、後者は「技術」が助けてくれる。

どちらも付け焼き刃で対処ができないから面白いし、事前の努力はどこかで自分を助けてくれる。

僕は100mileの経験はない、つまりゼロ!でも今まで走ってきた経験はあるし、何よりその中で自分の特性は理解している。対話もしてきた。

経験のない部分でもリスクは下げることができる。例えばFAT ADAPTATIONはレース中の補給トラブルの可能性を下げてくれるはずだ。自分のウィークポイントを底上げするトレーニングもしている。

 

そしてもうひとつ大事なこと。それは技術が経験を補ってくれる。ここでいう技術とは「出力」のことを想定している。100mileという距離に対して、最適な出力を探ることができれば、初挑戦でも目標を達成できる可能性だってあると信じてる。最適な出力って何か?というとまずは体力的にぜんぶ使い切ってゴールできること。もう少し具体的に言うと、区間ごとに分配した体力を、各区間でぜんぶ使い切ることができればレースに対して最適な出力だと考えている。

僕は下りは慎重派だ。なるべく大腿四頭筋を使わないように、ピッチは短くブレーキをかけないようにして、重力に逆らわず下る。現状、下りに関してのトレーニングプライオリティは低い。

フラットに関しては最重要課題。走れるところでしっかり走ることが一番効率的だからだ。ほとんどのランナーにとっては登りと下りで頑張るよりも一番タイムに影響する。フラットの出力を、より高く、より長い距離で最適化させていくことがレースでは重要で、だからこそ日々のトレーニングメニューをこなしている。

問題は登りだ。登り自体はけっこう得意。特にガシガシ登っていくような急坂はテンポよく登れる、少し傾斜が緩やかな登りなら、下りでつかった筋肉の疲労を抜きながら、ハムストリングで前進する余裕もある。でも改善するべき箇所があるのは走れる登り。特に林道や、山と山をつなぐようなロードの峠区間は走るのが苦手。歩き切ったら時間がかかるし、走るには足を使ってしまうような判断に迷う傾斜は対策が必要だと、はっきり感じている。体感値でレース中は斜度に合わせてランとウォークを織り交ぜている。この体感の部分をもっと客観的で、かつ持続的に一定のペースを保てたら、タイムに大きな影響があるはずだ。

 

こういう場合は確かめるのが一番!

ということで、高尾の日影沢キャンプ場から天狗が鎮座する小仏城山までのロード区間をつかって計測してきた。距離は3.7kmで高低差約390mの登りっぱなし天国。

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計測は三段階の動作。

① 普通のウォークのみ log

② パワーウォーク & ラン mix log

③ ランのみ log

こちらが結果をまとめたもの。

 

動作

タイム

平均ペース

平均心拍数

備考

Run

42分 29秒

11:21/km

138bpm

 

Power walk & Run

33分 56秒

9:33/km

144bpm

心拍146bpmを上限にRun & Walk mix

Run

37分 46秒

10:16/km

156bpm

心拍は配慮しつつRunのみ

(not walk)

※記録はSuunto APPから

 

結果は一目瞭然、そしていつものレースと同じように ② Power walk & Run が一番いいタイムかつ、SDGsな走りだったわけだ。

 

②に関しては常に時計で心拍数を確認しながら146bpmを越えないように意識した。越えた瞬間は止まらずにペースの遅いウォークに変えて心拍を落とした。実際、後半の急勾配になるほど、緩やかなウォークの時間は増えた。逆に、前半の1kmで斜度が10%に満たない区間はランの時間がながかった。そしてコース中盤の適度な傾斜区間はパワーウォークがメインで、実感としてはランもパワーウォークもタイムにあまりかわりはない。全体を通して息切れすることもなく、まさにウルトラのレースにある登りの一部をスルーするような、実践的な動作だった。レースはこの後も続くわけだし、登りきった後に走れるフラット区間が待っていても難なく切り替えられる疲労度だ。

 

①については心拍を気にせず歩きのみで、山頂まで動いた。コース終盤の3km以降は傾斜があるので心拍数の乱高下が続いたが、序盤に関しては完全に消化不良。タイムを比較しても②とは10分近い差がある。この10分、レースに置き換えたらとんでもない差だ。仮にレース本番で5岳を全歩きした場合、単純計算で50分の差がつく。これ、実際に計測すると、歩き通すことへの不利さが身を持ってわかる。

 

一番やってはいけないのが③であって、最後は完全にハンガーノックになってふらふらで天狗にタッチした。これじゃあレースで次のセクションを走る余裕はないし、補給して回復するまでに30分〜1時間くらいはかかるだろう。おまけにタイムでも②より遅く、走り通すことの意味のなさがわかる。

 

こう比較すると、Power run & Walk は一番堅実なのは歴然。今回は動作の違いによる比較だったけど、本当に知りたいのは傾斜に対するWalkとRunの使い分けの最適化だ。普段の僕の練習からするとマフェトンの設定値である146bpmをひとつの基準にするのは一番シンプルだろう。でも心拍はその日の体調や、その瞬間の疲労度、気温によって変動する。斜度を計測するスカウターがあれば便利なんだけど、そんなものはない。最適化への検証はレース前にもやるべきだな。これからの練習でひとつ基準にするなら、斜度10%未満の傾斜を走り続けるトレーニングだ。これができれば、きっとレース中に大きなアドバンテージになるはずだから。