実践しています。

up and ups just fine

生活の再構築

f:id:tomoyayazaki:20210913182932j:plain

 

高尾に引越した。

トレイルランニングをやっている日本人なら、東京在住者に限らず一度は耳にしたことがある地名の高尾。東京を代表する山域で、都心からのアクセスの良さや、ルートバリエーションの豊富さから、高尾でのトレーニングをメインにしているランナーも多い。ローカルブランド、いや今や日本を代表するトレイルランニングブランドのAnswer4や、コーチングサービスのTOMO'S PITが高尾を拠点にしているのは言わずもがな。高尾山口駅周辺には宿泊施設のMt.TAKAO BASE CAPMタカオネが誕生して、トレイルランニングをキーワードに、現在進行系で街が活性化している。

山を走れば誰かしらに会うのは日常で、走らなくとも街を歩けば知人に出くわすのが高尾。駅前で、スーパーで、コンビニの前で、或いは郵便局で、ばったりと仲間に出くわす。ランナー目線で言えば、こんな面白い町はそうそうない。稀に、「高尾は日本のボルダー(コロラド州)だ」と形容されるが、好きなアクティビティを中心に人が引き寄せられている。他にも相模湖方面に向かって走るサイクリストや、地元のおじさんが浅川沿いを走ったり、何かとスポーツをしている人を日常的に見かける、とても気持ちがいい街だ。

 

高尾に引越した一番の理由はもっとトレーニングをしたいから、ではなく自然に近いところに住みたいから。北海道に移住することが理想なのは変わらないけど、仕事と家族全員の生活基盤を考えるとまずは高尾が現実的な選択肢だった。都内での引越しだから大きく環境をかえず、通勤ができて、子どもの習い事も続けられる。自分一人だったら大した変化じゃないけれど、家族全員の妥協点を探して行動に移すのは実際に大変だった。

まずは保育園を探す所から。園としての環境が良く、かつ送り迎えを念頭に位置を考慮するとほぼ選択肢がない。つぎに対象の年齢に転入の枠がないと申し込みすらできない。さらに運良く空きがでても、市外からの転入希望はハードルが高く、八王子市内から応募がない場合にようやく選考対象となる。これは八王子市が特別なわけじゃなく、待機児童がでている地域はどこも似た状況にある。これだけ流動性が低いと同じ場所に住み続ける以外に選択肢がないと言っているようなものだ。どこに住むかなんていつでも選べる、と思っていても実際は設計された制度からジャンプすることは難しく、遡れば結婚して同居をはじめた場所が出発点のまま、気づけば終着点になるってことも一般的な話かもしれない。

話は逸れたが、タイミングよく保育園が決まり、希望にあった物件に引っ越しすることができた。(ちなみに、家族向けの物件数も限られていて、引越しを考える場合は長期戦覚悟だ)ちなみに、入園決定は毎月20日前後で、決まったらすぐに通っている保育園の退園手続きと、翌月初から新しい保育園に通う手続きと準備をしなければいけない。その間に物件を決めて、不動産契約、引越しと間髪入れずに対応していく。

それでも引越したかったのは自然の近くに住みたいという思いであり、子どもにとっても成長する上で大切なことだと思っているからだ。車を気にせず歩いたり、自転車に乗って公園まで行ったり、川遊びやらハイキングやら、のびのびとできる。朝になれば鳥の鳴き声が響き渡り、夜になれば真っ暗で無音の世界。幸い、戸建てのため前後左右に気遣うこともない。自分自身リラックスできて、都心の生活は無意識的なストレスが多いことを離れて実感した。

 

我が家の引越し案件は前からあったものの、決め手がなく手を付けられずにいた。ただ、以前の物件では手狭になっていくのは日々感じていた。エリアを変えずに広い物件に引っ越すとなると買った方が安いという分岐点だった。とは言え、長く住みたい場所ではないし、できれば人混みから離れたかった。大きな決断になるから落ち着いたら決めようと伸ばして、それこそがUTMF後の案件として据えていた。UTMFがなくなったことで、「少なくない犠牲」に対する精算をしなくてはいけない。その先頭が今回の引越しだった。

山は近くなったものの、まったく走れていない。リズムを決めて計画を立てたいものの、その日その日に追われて、時間も心も余裕ができた時に軽く走るのが精一杯。それでも、自然の近くにいるだけで精神的に穏やかで、家族と一緒にいる時間は代えがたいものだと実感している。ということで、少なくない犠牲の精算はこれからもつづく。