実践しています。

up and ups just fine

考・ピリオダイゼーション

東京マラソン中止からはじまり、UTMF中止の決定は今後のレース可否についてターニングポイントとなるだろう。と思っていたら、危機のレベルが飛躍的にあがって、レースどころではないという状況になった。Western Satateは中止が決まり、UTMBはまだ発表はされていないが中止を覚悟している選手は多いだろう。それどころか、このままでは町を走ること自体が規制される可能性も十分にある。

そんな先行き不透明な状況でも走ることに生の実感を見出し、たとえレースの開催は不透明でも目標を仮置きしたままトレーニングを続けている仲間が大勢いる。彼らは、たとえレースが中止になっても止まることなく、次の目標にむけて走り続ける。そして、自分もそのひとりでありたいと思っている。

 

自分は2019年11月に再始動して、2021年4月のUTMFを目指している。この影響にかかわらず、約1.5年を1サイクルとしてトレーニングをしているので、計画自体には何ら支障はない。(UTMF2021の出走可否については改めて触れよう)

そんな自分はともかくとして、この状況のなかでターゲットレースが1年延びたという人は少なくないはずだ。結果的にトレーニングサイクルが1年になってしまった選手が、今後どんなトレーニングプログラムを構築するのか、実は楽しみにしているところである。

 

何かというと、ピリオダイゼーションという考え方を基に、期分けして練習メニューを構築している場合、目標が延びたことに対してメニューをどう再構築するのか。これは目標レースによって、或いは選手の特性によって、時間の使い方が大きく変わるように思うからだ。

トレイルランニング、特にウルトラトレイルをメインにしている人であれば、1サイクルを6ヶ月と捉えることは、身体的にもレーススケジュールからも合理性が高いように思う。

 

www.new-hale.com

 

標準化された種目のフルマラソンでも、ダニエルズは16週間をサイクルとしていることから、複雑性の高いウルトラトレイルが6ヶ月を1サイクルとすることは十分理解できる。

十分理解できる。

理解できる...

理解できる??

いや、短くないか?42.195kmという同じ条件で作られたコースを4ヶ月サイクルで積み上げるフルマラソンに対して、プロファイルの違うレースを2つ狙いにいくには時間が足りないように思う。ましてや、シーズン中はトレイル、オフシーズンにはフルマラソンというトレイルランナーも多いと思うが、事ウルトラトレイルとフルマラソンでは鍛える能力が違うので、肝心のトレイルレースへの影響は少なくないように感じる。(50マイルまでは相互作用が大きいかもしれない)

もちろん、ターゲットレースの重要度、レースに求めるもの、ロードとトレイルのウェイトによって様々だ。つまり優劣ではないし、正解のある話でもない。

ただ、もし特定のレースにパフォーマンスを最大化するなら、1年を1サイクルに捉えることが目標達成に近づく鍵になると思っている。

 

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標準的な期分け

 

例えば、基礎期でスピードを中心に走力アップの練習に費やす。

特異期でレースに合わせて距離を伸ばしつつ、垂直方向の練習を取り入れる。

調整期は本番を想定した総合的な練習と、テーパリングで緩やかなレストにはいる。

これを年間で2回転させるのが6ヶ月サイクルになるだろう。

 

rb-rg.jp

↑ メゾサイクルごとのテーマを参考にしている。
 

 

 仮に、メゾサイクルを2ヶ月単位とした場合、基礎走力を構築するための時間はわずか2ヶ月となる。もちろん、基礎期に比べて特異期はトレーニングの質も量も段階的に上がるはずだから、走力はここでも上がり続ける。

ただ、調整期に入るとここからは完全にレースのための時間になる。つまり、この2ヶ月は特定のレースのために費やすことになる。これが2回あるなら年間の4ヶ月は調整をしている時間になる。レース後の回復期を含めるともう少し伸びるかもしれない。

年に2回のターゲットがある弊害はこの時間だと思う。勿論、本番を経験する回数も倍のサイクルで回せるのでメリットもある。例えレースで失敗しても、次のレースへの糧になることは大きなプラスだ。

それでも、年間のトレーニング時間そのものが減るわけである。

 

自分は基礎的な走力がないことを改善しようと昨年11月から取り組んでいる。実際にやってみると2ヶ月では到底足りない。 例えば、今はインターバルのペースを1ヶ月ごとに10秒縮めている。基礎期が2ヶ月なら20秒だ。これを2週間単位に変えれば40秒縮められることになるが、今度は怪我のリスクが高まる。特異期に続けることもできるが、この時期にやるべき練習もあるので、質の点からオーバートレーニングになる恐れがある。

そう考えていくと、フルタイムの仕事をしながらランニングのパフォーマンスを上げていくことは、週単位・月単位で何をテーマにどれだけ時間を注ぐかが重要になると、自分で実践して感じ得ることがとても大きい。

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メゾサイクルとミクロサイクル

 

1年をマクロサイクルとした場合、調整期は1回となるので、基礎期と特異期にしっかりと時間を割くことができる。

上の図は今自分が意識している時間配分だ。小さな丸にあたるミクロサイクルを1ヶ月として、基礎期に合計6ヶ月費やす。基礎1は量を優先して、基礎2で質に切り替える。基礎3は基礎1+2となるので、つまり量に寄っている。基礎4はさらに質に寄せていく。これを6ヶ月かけて段階的に質を高めていく。

特異期も同じように、垂直方向や距離に対して量と質を行き来して身体に馴染ませていく。こうして段階的に付加をかけることで怪我のリスクを抑えつつ、タームが長いので心の余裕も生まれると思っている。

 

おっと、何かいつもと様子が違うぞ!と思った方もいるかもしれない。MAFは量(時間)を追求するトレーニングであって、質(強度)は一定のはずなのでは?と、鋭い人なら思うだろう。

そう、トレーニングのアプローチを変えようと思っている。3月はいったんマフェトンペースから離れて、強度に舵を切ったわけだが、思いもよらぬ発見が多く続けていくことにした。

こんな方向転換ができるのも1年サイクルのいいところかもしれない。

 

1年サイクルだからレースも1本だけにする必要はないように思う。例えば、6ヶ月のタイミングで一度レースに出るのも策かもしれない。現状確認をしたり、実践感覚を養うことはきっとプラスになる。

ただし、そのレースのために特異期を確保することや過度に調整期は取らず、あくまで1年サイクルの流れの一部として出てみるといいだろう。

UMTB2019で入賞した小原さんはUTMBをターゲットにしながら、ペース配分の確認としてUTMF2019に出場した。これは推測だが、Podcastや雑誌でのインタビューをつなぎ合わせると1年かそれ以上を1サイクルとしてUTMBに向けて準備をしていたことが覗える。

 

100miles100times.com

 

ちなみに、さらに鋭い方なら気づいているかもしれない。「君さ、1年1年って連呼するけど、UTMF2021まで1.5年使ってるじゃん!」と。そう、1.5年確保しているわけだ。

この0.5年は何かというと、基礎期の前にある迷走期(試走期)と位置づけている。どんなトレーニングが効果的なのかゆっくりと検証をする。つまり、練習のための練習をしている。これまでの数ヶ月間がまさにこれにあたる。そして基礎期への入り口が見えてきたのが最近だ。

ひとによってはFAPに舵を切ったり、フォームを再構築することもあるだろう。とにかく、本番のためのプログラムに入る前に、ゆっくりと時間をかけることができる遊びの期間。この間は効果がなくても、一時的にタイムが落ちても、長い目で見たときにプラスになるなら、好きなことを試せばいいと思っている。

 

ランニング人生は長い。すべてがレースのためじゃなく、新たな発見をするために寄り道をすることは大事だし、その遊びが高い壁を越えるための力になると信じている。

 

ここまでがUTMF2021にむけて1.5年を確保している自分の考え方。トレーニング内容は流れのなかで常に変わっていくけれど、1.5年の中での3つ(迷走期を加えると4つ)のサイクルに割く時間配分はかわらないと思う。

さて、冒頭に触れたようにターゲットレースが伸びていく現状で、ピリオダイゼーションを意識する選手がどのように変化していくのか、これは気になるテーマなので密かに観察・意見交換している。

 

1年後、無事にレースが開催されたら、飛躍的に全体の競技レベルが上っていることを今から楽しみにしている。